音声ガイド
5179. 穀物の収穫
Pieter Bruegel the Elder, 1565
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マリアン・エインズワース(MARYAN AINSWORTH):この作品は、メトロポリタン美術館が所蔵する風景画の最高傑作の一つといわれる、ピーテル・ブリューゲル(父)(Pieter Bruegel the Elder)の《穀物の収穫》です。作品からは蒸し暑い天気や、農民たちが疲れきって昼休みを過ごしている様子がはっきりと伝わってきます。
キース・クリスチャンセン(KEITH CHRISTIANSEN):《穀物の収穫》は、1年の営みを描いた6枚組の連作のうち8月と9月を描いたものだといわれています。
マリアン・エインズワース:この連作は、間違いなく西洋美術史の転機となった作品と考えらえています。ルネサンス時代の北ヨーロッパとイタリアにおいては、風景描写はキリスト教の宗教画の中で補助的な役割しか持たなかったものですが、この風潮はここでは完全に失われています。その代わりに登場したのは、新たな人間中心主義とでもいうべきものです。それ以前の絵画とはきわめて対照的に、農民が作物を収穫し、家畜の世話をし、狩りをする様子がありのままに描かれています。まさに彼らこそ、画面いっぱいに広がる風景に描かれているのです。
私はいつも、この作品で人間が自然と一体化している様子が素晴らしいと感じます。この作品の中ほど右側では、女性たちが前かがみになって麦わらを束ねていますが、地面につくほど腰を深くかがめて三角形の形になっています。彼女たち自身が麦の束と化しているかのようにも見えます。