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ペリシテ人に捕らえられるサムソン

1619
On view at The Met Fifth Avenue in Gallery 620
巨大で写実的な人物が描かれたグエルチーノのこの作品は、旧約聖書のサムソンとデリラ物語のクライマックスを描いたものです。愛人のデリラの策略によってサムソンがペリシテ人に捕らえられ、拘束され失明する場面です。この迫力あふれる、極めて独創的な構図の焦点となっているのはサムソンの勇ましい背中ですが、グエルチーノはキャンバ スを人物で埋めることによって強烈な情景を描き出しています。全体に見られる劇的な照明効果は、彼の初期の作品の特徴だった自然主義的なキアロスクーロ(明暗法)によるものです。この作品は画家として頂点を極めていたグエルチーノが、フェラーラのローマ教皇特使で著名な収集家だった枢機卿ジャコモ・セーラの依頼によって描いた数点のうちの1枚です。

Artwork Details

Object Information
  • 題:
    ペリシテ人に捕らえられるサムソン
  • アーティスト:
    グエルチーノ (ジョヴァンニ・フランチェスコ・バルビエーリ) イタリア、1591–1666年
  • 月日:
    1619年
  • 手法:
    キャンバスに油彩
  • 寸法:
    191.1 x 236.9 cm
  • 提供者:
    チャールズ・ライツマン夫妻寄贈、1984年
  • 受け入れ番号:
    1984.459.2
  • Curatorial Department: European Paintings

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5089. ペリシテ人に捕らえられるサムソン

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キース・クリスチャンセン(KEITH CHRISTIANSEN):学芸員のキース・クリスチャンセンです。この作品は愛と裏切りという普遍的な主題を取り上げています。手前にいる女性はデリラ(Delilah)で、怪力の持ち主であるサムソンを誘惑して眠らせ、サムソンの力の源である髪の毛を切ろうとします。サムソンはデリラの親戚であるペリシテ人(Philistines)に捕えられ、痛めつけられた挙句、失明させられるのです。

ゼイヴィア・サロモン(XAVIER SALOMON):この作品の優れている点は、主人公が鑑賞者をみていないこと、逆に鑑賞者が彼の後姿をみていることです。目が見えなくなるということや彼が失明することは、彼の顔を見せないことで捉えられているのです。そして、たくましく強靭な肉体を持ちながらもなすすべのないサムソンの絶望感が感じられます。私たちも、サムソンが周りの人々に抑えつけられているのを目のあたりにして、同様の無力感を感じます。

キース・クリスチャンセン:非凡な才能を持つグエルチーノはわずか20代に入ったばかりですでに一流画家としての名声を築き、バロック様式の発展の立役者となりました。

ゼイヴィア・サロモン:これはバロック絵画の名作です。大きな画面に大柄の人物が等身大に描かれたスケールの大きな作品です。過剰とさえ言えるかもしれません。鑑賞者もまた、ある意味絵画の一部となってしまいます。グエルチーノはわずか一瞬の出来事を切り取って表現しています。しかしこの作品は非常に入念に構成されているため、一方で冷酷な暴力と力、もう一方で力を失った時の絶望感や無力感を見る者に感じさせるのです。

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